Solana Subscriptions & Allowances
図解ハンズオン
DATA · 2026.06

ソラナ 決済プリミティブ

サブスクを、
ブロックチェーンに

インターネット経済はサブスクで回っている。なのに暗号資産は長らくそれが苦手だった——いまSolanaに、定期支払いと委任支出のネイティブな仕組みが生まれた。動かしながら理解しよう。

200M+
月間のステーブルコイン決済件数
~400ms
ブロックの生成間隔
$11B
流通するステーブルコイン
公表値
00

なぜ、ブロックチェーンはサブスクが苦手だったのか

クレジットカードの自動更新は当たり前。でも同じことを素のブロックチェーンでやろうとすると、ある“原理的な壁”にぶつかる。まずは直感を試してみよう。

🤔 まず予想してみよう

あなたの普通の暗号ウォレットだけで、来月の月額料金を“お店の側が”自動で引き落とせる?

正解はB。 ブロックチェーンの基本は「本人が、毎回、署名して送る」プッシュ型。あなたが寝ている間に、誰かがあなたの残高から勝手に引っ張ることはできない——便利な自動課金には、その手前に“許可”の仕組みが要る。

push / pullプッシュ型 と プル型

Web2のサブスクは、銀行やカード会社が間に立って毎月「引っ張って(プル)」くれる。ブロックチェーンの初期設定はその逆——あなたが毎回「押し出す(プッシュ)」。時間を進めて、2つの世界の違いを体感しよう。

到来する請求サイクルdemo · push_vs_pull

同じ月額サービスを2つの世界で支払う。「時間を流す」と月が自動で進む。左(プル)は放っておいても課金される。右(プッシュ)は毎月あなたが署名しないと、次の月が来た時点で“未払い(手遅れ)”に固定される。

Web2(プル型)🟢 稼働中

お店が自動で引き落とす。あなたは寝ていてOK。

素のブロックチェーン(プッシュ型)🟢 稼働中

あなたが毎月署名しないと未払い。忘れると手遅れになる。

あなたのタップ: プル型 0 / プッシュ型 0 / 未払い(手遅れ) 0

プル型はあなたが寝ていても回り続ける。プッシュ型は毎月あなたの署名が要り、忘れれば未払い——サブスクを成立させるには、安全に“プルを許可する”仕組みが必要だ。

delegate実は、許可する方法はある——でも“枠は1つ”

Solanaのトークンの仕組み(SPL Token)には「代理人(デリゲート)」機能があり、誰かに“プル”を許可できる。ところが落とし穴がある——代理人を登録できる枠は、トークンごとにたった1つ。新しく登録すると、前の代理人は自動的に取り消される。

下の端末で、あなたのUSDCの「代理人枠」にカードを挿してみよう。

代理人ターミナルdemo · one_slot

挿せる代理人はいつでも1枚だけ。別のカードを挿すと、いま入っているカードは弾き出される。

あなたのUSDCアカウント · 代理人枠 ×1
代理人 未設定
ログ: まだ代理人は設定されていません。

3つとも同時に動かしたいのに、枠は1つしかない。これが「ブロックチェーンはサブスクが苦手」の正体——技術的な“1枠問題”だ。

💡 これは比喩ではなく、実際の制約。 Solanaのトークンアカウントは、一度に1つの承認済み権限しか持てない。だから素のままでは、月額サブスク・給与・エージェント予算を同じ資金で同時に走らせることができなかった。
01

1枠を“賢いハブ”が受け持つ

代理人の枠は1つだけ——前の章で見た壁だ。解き方はシンプル。その1枠を、プログラムが動かす“分配ハブ”に任せる。ハブを一度だけ承認すれば、その下に何本ものルールを並べられる。図のパーツをタップして、仕組みを開いてみよう。

サブスク権限の解剖図diagram · anatomy

各パーツをタップすると説明が出る。「引き落としを再生」を押すと、署名 → ルール照合 → 資金の移動までが動く。このデモが照合するのは定期委任カードだけ(他の2枚は別ルールの例)。コインの動きと残り枠ゲージに注目。

あなたが署名 一度きりの承認
↳ トークンプログラム(実行役)
相手が署名 引き落とし要求
USDC
✍ 署名
✍ 署名
✕ ブロック
資金はそのまま(口座に残る)
tap
パーツをタップして説明を表示
あなた・ハブ・ルールカード・引き出す側・トークンプログラム——どれでも選べます。
① 相手が「引き落とし」を要求して署名する
② ハブが対応するルールカードを照合する
③ 上限・期間・期限の範囲内かを判定する
④ トークンプログラムが実際に資金を移す

who signs署名するのは誰?——ここが核心

サブスクの不思議は「自分が操作していないのに課金される」こと。タネはこうだ。あなたは“各回の課金”ではなく、最初に“ルールそのもの”に署名する。あとはそのルールの範囲内で、相手が引き落としに署名する。

あなた(ユーザー)が署名
設定 と 取り消し
ハブの承認、ルールカードの作成、そしていつでも行える取り消し。主導権は最初から最後まであなたにある。
相手(引き出す側)が署名
毎回の引き落とし
店・サービス・AIエージェントが各回の引き落としに署名する。ただし、あなたが決めたルールを1ミリも超えられない。

00章の謎、回収

だから「寝ている間に課金」できる——でも、あなたが前もって決めたルールの中だけ。プルの許可と、その制御を、同時に手に入れたわけだ。

💡 「上限なしの承認」は怖くない。 ハブは技術的には上限なしの権限を受け取るが、自分からは1円も動かせない。送金は必ず、あなたが作った有効なルールと一致したときだけ成立する。プログラムはメインネットで稼働中・オープンソースで、Cantina・Spearbitの監査を受けている(プログラムID De1eg…avR44)。安全性のしくみは03章で詳しく。
02

同じお金、3通りの上限

ハブの下に並ぶルールカードは3種類。違いは2つだけ——「上限がどう振る舞うか」と「誰が条件を決めるか」。3つのバケツを並べて、時間を進めたり引き出したりして、挙動の違いを体感しよう。

🤔 まず予想してみよう

AIエージェントに「毎月の上限」ではなく、“使い切ったら終わりの総予算”を渡したい。どのカード?

正解はA、固定委任。 総額の上限を一度だけ渡し、使うほど減って、ゼロか期限で止まる。期間でリセットされないから“使い切り型”。エージェントに渡す予算にぴったりだ。

bucket compareバケツ挙動くらべ

3つのモデルを並べて動かす。「次の期間へ」で時間を進め、固定・定期は自分で「引き出す」。上限を超えた引き出しは弾かれる(バケツが赤く震える)。プランだけは“お店が”毎期自動で回収する点に注目。

3モデル比較ターミナルdemo · buckets
model · fixed

🅐 固定委任(Allowances)

条件を決める: あなた
6.0
残り総額
6.0 / 6.0

総額の上限。引き出すほど減り、期間が変わっても戻らない。使い切ったら終わり。公式名「Subscriptions & Allowances」の "Allowances" は、この固定委任のこと。

model · recurring

🅑 定期委任

条件を決める: あなた
4.0
今期の残り
4.0 / 4.0

期間ごとの上限。引き出すと減るが、次の期間になると満タンにリセット。給与のように毎期くり返す。

model · plan

🅒 サブスクプラン

条件を決める: お店
🏪 加盟店
毎期 5.0 を自動回収
5
回収済み 0 期 × 5.0

お店が公開した固定額を、毎期“お店が”回収する。あなたは加入するだけ。条件は加入時に固定。

🔒 条件は固定(値上げ不可)
1
ログ: 「引き出す」や「次の期間へ」を押すと、ここに結果が出ます。

2 axes違いは“2つの軸”だけ

3モデルは、たった2つの問いで整理できる。「誰が条件を決める?(あなた / お店)」と「上限はどう効く?(累計で減る / 毎期くり返す)」。

あなたが決める
お店が決める
🅐固定委任総額で減っていく
🅑定期委任毎期くり返す枠
(該当なし)
🅒サブスクプラン毎期の固定請求
↤ 累計で減る
毎期くり返す ↦

where it fitsどこで効く?

🅐 fixed
AIエージェント予算
使い切ったら止まる総予算を渡せる。期限も付けられるので、暴走しても被害は上限まで。
例: カード連動の支出枠、前払いの利用枠
🅑 recurring
給与・業務委託
毎期くり返す支払いを、条件はあなた側で固定して回せる。受け取る側が期ごとに引き出す。
例: 給与、定額の業務委託費
🅒 plan
SaaS・API課金
お店が料金プランを公開し、利用者が加入。毎期お店が自動回収する。請求書も決済代行も要らない。
例: 月額SaaS、APIティア課金
💡 プランだけ“逆向き”。 固定・定期は「あなたが条件を決め、相手が引き出す」。プランは「お店が条件を公開し、お店(または許可された回収者)が回収する」。同じ仕組みの上の、もう一つの使い方だ。1つのプランは何万人もの加入者に使い回せる。
03

これは安全?——3つの不安に、3つの装置

お金が動く話だから、懐疑は正しい。「勝手に引き続けられたら?」「後から値上げされたら?」「別の口座に流されたら?」——よくある3つの不安に、プログラムがどう答えるかを動かして確かめよう。前提はひとつ:ハブは単独では1円も動かせない。

安全性チェック・ターミナルdemo · safeguards
01

緊急停止スイッチ

不安: 業者が勝手に引き続けたら? 一件ずつ止めるのは大変そう。

🛡️ サブスク権限ハブ 代理人の承認: 有効
ぶら下がる委任
🎬 動画 稼働中 💼 給与 稼働中 🤖 AI予算 稼働中

しくみ: ハブ(サブスク権限)は、あなたのトークンアカウントが承認した“共通の代理人”。すべての委任はこのハブを通して引き落とす。ハブを閉じると、その代理人の承認そのものが取り消されるため、ぶら下がる委任は一斉に引き落とせなくなる。再開するときは、新しいハブを作り直す。なお各委任アカウントの預け金(rent)を取り戻すには、別途それぞれを閉じる。

02

値上げ防止スナップショット

不安: 加入した後に、お店がこっそり料金を上げてきたら?

👤 あなた
$
🚪 照合
🏪 お店

✗ お金は動かない — あなたの口座に残る

あなたの控え(加入時)
$49/
指紋 #a1c3
=
お店の現在のプラン
$49/
指紋 #a1c3

しくみ: 加入時のプラン条件が“指紋”として控えに保存される。回収時に、控えと現在のプランを照合。条件をすり替える(削除して別条件で作り直す)と指紋が変わり、不一致として弾かれる。中核の請求条件は作成後そもそも変更できない。

03

引き出し先ホワイトリスト(プラン)

不安: 回収する側(お店や代行業者)が、お金の送金先を勝手に別の口座へ付け替えられたら?

回収
5
プランに固定された宛先🔒 変更不可
リストにない別口座リスト外

送金先は、プラン作成時に決めた宛先(最大4つ)に固定。回収できるのも「所有者+最大4人の指名プーラー」だけ。

答え: できない。宛先はプランに固定され、作成後は変更できない。だから回収できる人でも、リストにない口座へは1円も送れない。「料金(SG2)も、送金先(SG3)も、後から勝手に変えられない」という二重の縛りだ。

※ これはサブスクプラン特有のしくみ。固定委任・定期委任では別の守り方で、「あなたが指名した1人だけが、あなたの決めた上限まで引き出せる」のが基本。

in shortまとめ:主導権はあなたに

🛑
まとめて即停止
ハブ(共通の代理人)を閉じると、その承認が取り消され、ぶら下がる委任は一斉に引き落とせなくなる。
🔒
値上げは効かない
加入時の条件が指紋で保存され、すり替えは不一致として拒否。中核条件は変更不可。
🎯
行き先も人も限定
回収できるのは所有者+最大4人。送金先はホワイトリストの宛先だけ。
💡 土台にあるのは“単独では動けない”という設計。 送金は必ず、あなたが作った有効なルールと一致したときだけ成立する。委任はいつでも取り消せ、預け金(rent)も戻る。プログラムはオープンソースでメインネット稼働中、Cantina・Spearbitの監査を受けている。なお本サイトは教育目的で、投資助言ではない。
04

活用とあゆみ

仕組みも安全性も見てきた。最後に「何が作れるか」と「ここまでの道のり」を見て締めよう。活用例は、ボタンで“使うモデル”を絞り込める。

what to build何が作れる?

🔌
定期API課金
料金プランをオンチェーンで公開し、利用者が直接加入。毎期自動で回収され、請求書も決済代行も要らない。
🅒 プランHelius
🤖
AIエージェントの支出上限
自律エージェントに、期限つきの総予算を渡す。使い切るか期限が来れば自然に止まる。暴走しても被害は上限まで。
🅐 固定pay.sh · x402
💼
オンチェーン給与
支払う側と受け取る側のあいだに、毎期の支払い条件を直接書き込む。自動で回り、記録はすべてオンチェーンで監査可能。
🅑 定期
📰
コンテンツの従量課金
毎月の利用枠を渡し、記事を読むたびに少しずつ引き落とす。「読んだ分だけ払う」を大規模に成立させる。
🅑 定期
🧾
ステーブルコイン請求回収
企業顧客が定期的な自動回収を承認し、手作業の消し込みを、まるごとオンチェーンの請求関係に置き換える。
🅒 プランConfirmo
💳
カード連動の支出枠
ウォレットが、カードのプログラムと複数のサブスクを衝突なく同時に承認できる。組み込みウォレットからの決済にも。
🅐 固定Dynamic / Fireblocks

who's building誰が作っている?

基盤プログラムはMoonsong LabsがSolana Foundationと共同で構築。複数の設計パートナーが、稼働中または統合を進めている。

Moonsong Labs基盤プログラムを構築
HeliusAPIティアのオンチェーン課金
Confirmoステーブルコイン請求回収
Dynamic組み込みウォレット決済(Fireblocks)
Majority · Mesh · Meow設計パートナー
pay.shエージェント決済層がサブスク対応
🤖
追い風は「AIエージェント決済」
Solana上ではすでに35M+ 件のx402決済(エージェント向けの都度払い)が処理されている。エージェントは都度払い(pay.sh / x402)が基本だが、固定委任で“予算”を、プランで“定額アクセス”を渡せるようになり、サブスクが自律的な商取引に柔軟性を加える。

journeyあゆみ

背景
制約:「1アカウント=1デリゲート」
SPLトークンは、1つのアカウントに代理人(デリゲート)を1人しか設定できない——この章で見た“1枠問題”は仕様上の制約として存在していた。「サブスクには複数の委任が要る」という出発点。
2026.05
pay.sh 公開
Google Cloud連携の“エージェント決済層”が登場。AIが都度払いでAPIを使えるように。サブスクの土台が整う。
2026.06.02
メインネットで稼働開始
Subscriptions & Allowances がローンチ。Moonsong LabsがSolana Foundationと構築、Cantina・Spearbit監査済み・オープンソース。SPL Token と Token-2022 に対応し、Squads・Swigとも統合テスト済み。設計パートナーが統合を開始。
2026.06 · 現在地
エコシステムが構築中
pay.shがサブスクに対応。定額API課金・オンチェーン給与・ステーブルコイン請求回収が、共有の標準プリミティブの上で次々と立ち上がっている。

インターネットはサブスクで回っている。いま、その土台が Solanaにも。

あなたが署名するのは“ルール”ひとつ。あとは仕組みが、あなたの決めた範囲の中だけで動く——固定で総額を、定期で毎期の枠を、プランでお店の定額を。1枠の壁は、賢いハブで越えられた。