ソラナ 決済プリミティブ
インターネット経済はサブスクで回っている。なのに暗号資産は長らくそれが苦手だった——いまSolanaに、定期支払いと委任支出のネイティブな仕組みが生まれた。動かしながら理解しよう。
クレジットカードの自動更新は当たり前。でも同じことを素のブロックチェーンでやろうとすると、ある“原理的な壁”にぶつかる。まずは直感を試してみよう。
🤔 まず予想してみよう
あなたの普通の暗号ウォレットだけで、来月の月額料金を“お店の側が”自動で引き落とせる?
Web2のサブスクは、銀行やカード会社が間に立って毎月「引っ張って(プル)」くれる。ブロックチェーンの初期設定はその逆——あなたが毎回「押し出す(プッシュ)」。時間を進めて、2つの世界の違いを体感しよう。
同じ月額サービスを2つの世界で支払う。「時間を流す」と月が自動で進む。左(プル)は放っておいても課金される。右(プッシュ)は毎月あなたが署名しないと、次の月が来た時点で“未払い(手遅れ)”に固定される。
お店が自動で引き落とす。あなたは寝ていてOK。
あなたが毎月署名しないと未払い。忘れると手遅れになる。
プル型はあなたが寝ていても回り続ける。プッシュ型は毎月あなたの署名が要り、忘れれば未払い——サブスクを成立させるには、安全に“プルを許可する”仕組みが必要だ。
Solanaのトークンの仕組み(SPL Token)には「代理人(デリゲート)」機能があり、誰かに“プル”を許可できる。ところが落とし穴がある——代理人を登録できる枠は、トークンごとにたった1つ。新しく登録すると、前の代理人は自動的に取り消される。
下の端末で、あなたのUSDCの「代理人枠」にカードを挿してみよう。
挿せる代理人はいつでも1枚だけ。別のカードを挿すと、いま入っているカードは弾き出される。
3つとも同時に動かしたいのに、枠は1つしかない。これが「ブロックチェーンはサブスクが苦手」の正体——技術的な“1枠問題”だ。
代理人の枠は1つだけ——前の章で見た壁だ。解き方はシンプル。その1枠を、プログラムが動かす“分配ハブ”に任せる。ハブを一度だけ承認すれば、その下に何本ものルールを並べられる。図のパーツをタップして、仕組みを開いてみよう。
各パーツをタップすると説明が出る。「引き落としを再生」を押すと、署名 → ルール照合 → 資金の移動までが動く。このデモが照合するのは定期委任カードだけ(他の2枚は別ルールの例)。コインの動きと残り枠ゲージに注目。
サブスクの不思議は「自分が操作していないのに課金される」こと。タネはこうだ。あなたは“各回の課金”ではなく、最初に“ルールそのもの”に署名する。あとはそのルールの範囲内で、相手が引き落としに署名する。
✓ 00章の謎、回収
だから「寝ている間に課金」できる——でも、あなたが前もって決めたルールの中だけ。プルの許可と、その制御を、同時に手に入れたわけだ。
ハブの下に並ぶルールカードは3種類。違いは2つだけ——「上限がどう振る舞うか」と「誰が条件を決めるか」。3つのバケツを並べて、時間を進めたり引き出したりして、挙動の違いを体感しよう。
🤔 まず予想してみよう
AIエージェントに「毎月の上限」ではなく、“使い切ったら終わりの総予算”を渡したい。どのカード?
3つのモデルを並べて動かす。「次の期間へ」で時間を進め、固定・定期は自分で「引き出す」。上限を超えた引き出しは弾かれる(バケツが赤く震える)。プランだけは“お店が”毎期自動で回収する点に注目。
総額の上限。引き出すほど減り、期間が変わっても戻らない。使い切ったら終わり。公式名「Subscriptions & Allowances」の "Allowances" は、この固定委任のこと。
期間ごとの上限。引き出すと減るが、次の期間になると満タンにリセット。給与のように毎期くり返す。
お店が公開した固定額を、毎期“お店が”回収する。あなたは加入するだけ。条件は加入時に固定。
🔒 条件は固定(値上げ不可)3モデルは、たった2つの問いで整理できる。「誰が条件を決める?(あなた / お店)」と「上限はどう効く?(累計で減る / 毎期くり返す)」。
お金が動く話だから、懐疑は正しい。「勝手に引き続けられたら?」「後から値上げされたら?」「別の口座に流されたら?」——よくある3つの不安に、プログラムがどう答えるかを動かして確かめよう。前提はひとつ:ハブは単独では1円も動かせない。
不安: 業者が勝手に引き続けたら? 一件ずつ止めるのは大変そう。
しくみ: ハブ(サブスク権限)は、あなたのトークンアカウントが承認した“共通の代理人”。すべての委任はこのハブを通して引き落とす。ハブを閉じると、その代理人の承認そのものが取り消されるため、ぶら下がる委任は一斉に引き落とせなくなる。再開するときは、新しいハブを作り直す。なお各委任アカウントの預け金(rent)を取り戻すには、別途それぞれを閉じる。
不安: 加入した後に、お店がこっそり料金を上げてきたら?
✗ お金は動かない — あなたの口座に残る
しくみ: 加入時のプラン条件が“指紋”として控えに保存される。回収時に、控えと現在のプランを照合。条件をすり替える(削除して別条件で作り直す)と指紋が変わり、不一致として弾かれる。中核の請求条件は作成後そもそも変更できない。
不安: 回収する側(お店や代行業者)が、お金の送金先を勝手に別の口座へ付け替えられたら?
送金先は、プラン作成時に決めた宛先(最大4つ)に固定。回収できるのも「所有者+最大4人の指名プーラー」だけ。
答え: できない。宛先はプランに固定され、作成後は変更できない。だから回収できる人でも、リストにない口座へは1円も送れない。「料金(SG2)も、送金先(SG3)も、後から勝手に変えられない」という二重の縛りだ。
※ これはサブスクプラン特有のしくみ。固定委任・定期委任では別の守り方で、「あなたが指名した1人だけが、あなたの決めた上限まで引き出せる」のが基本。
仕組みも安全性も見てきた。最後に「何が作れるか」と「ここまでの道のり」を見て締めよう。活用例は、ボタンで“使うモデル”を絞り込める。
基盤プログラムはMoonsong LabsがSolana Foundationと共同で構築。複数の設計パートナーが、稼働中または統合を進めている。
インターネットはサブスクで回っている。いま、その土台が Solanaにも。
あなたが署名するのは“ルール”ひとつ。あとは仕組みが、あなたの決めた範囲の中だけで動く——固定で総額を、定期で毎期の枠を、プランでお店の定額を。1枠の壁は、賢いハブで越えられた。